📖 このお話は・夫の転勤で、また仕事を手放すことに・小さな会社の「ひとり経理」として働いた日々・出産・育児を経て、気づけば長いブランクに

連載「はたらき方をさがして」の第3回です。
(第1回「キャリアのはじまり 〜実務の道を選ぶまで〜」/第2回「結婚で変わった働き方」はこちら)

知人の会計事務所に声をかけてもらい、少しずつ仕事をする楽しさを取り戻していました。
けれど人生は、また新しい転機を連れてきます。

今回は、二度目の「振り出し」のお話です。

夫の転勤で、また仕事を手放すことに

会計事務所での仕事にも慣れ、顧問先を訪問する役割も担うようになったころ。
夫の転勤が決まりました。

引越し先は、通える距離ではありませんでした。
あの「仕事がない日々」から救ってもらった場所を、離れることになりました。

「また振り出しか……」という落胆と、新しい土地での生活への期待。
ないまぜの、複雑な気持ちでした。

せっかく知り合いも増えてきた矢先のこと。
またゼロから始めるしんどさが、あの頃の記憶と一緒によみがえってきました。

担当していた会社は、決算のひと区切りまで

ありがたかったのは、事務所が「区切りまで続けてほしい」と言ってくれたことです。

引越したあとも、担当していたお客様の決算がひと区切りつくまで、自宅で作業をして、月に一度だけ事務所に「出張」する形で仕事を続けさせてもらいました。

当時はまだ、オンラインの会計ソフトが広まる前。
仕訳伝票の束をたくさん預かって、自宅でひたすら起票し、月次の数字をまとめる。

資料のやり取りは郵送で、データを使う作業は事務所に行った日にまとめて片付ける——そんな、手作りのリモートワークでした。

いまでこそ「リモートワーク」という言葉が当たり前になりましたが、当時はまだ、家で仕事をする人がめずらしかった時代。

振り返れば、これが私の最初の「在宅経理」でした。
このときの経験が、ずっとあとで大きな意味を持つことになります。

小さな会社の、ひとり経理に

新しい土地では、小さな会社で「ひとり経理」として働きました。

経理の担当は私ひとり。
税理士の先生からの指示で作業をしながら、営業事務の仕事もこなす、なんでもやる日々です。

経理と違って、営業事務には「決まり」があるようで、ありません。
臨機応変な対応の連続は、経理ひと筋だった私には、慣れるまでなかなか大変でした。

それでも、小さな会社の実務全般をひとりで一気通貫に経験できたことは、私の大きな財産になりました。

この仕事は、出産の直前まで続けました。
ありがたいことに「落ち着いたらまた戻ってきてほしい」と言っていただけたのですが、当時のわが家の状況では難しく、悩んだ末に辞退しました。

出産、育児のフェーズ

出産前は、「産後が落ち着いたら、子どもを預けて働くこともできるかな」と、漠然と考えていました。
けれど現実は、予定どおりにはいきませんでした。

産後は、まとまって眠れる時間がほとんどない毎日。
体調の回復にも、時間がかかりました。

両手首が腱鞘炎になり、包丁を持つと激痛が走るほどに。
お医者さんからは投薬や手術も提案されましたが、授乳中だったため見送り、サポーターやテーピングに頼る日々でした。

料理もままならないので、ご飯を炊くことと、お味噌汁を作ることだけに専念。
痛みが和らぐまでの一年ほどは、おかずの宅配と夫の買い出しで乗り切りました。
産後ひと月で、体重は10キロ以上落ちていました。

働きたい気持ちがなかったわけではありません。
ただ、あのころの私は、日々の生活をまわすことで精一杯でした。

気づけば、長いブランクに

そこから、家庭の事情もあって、外へ勤めに出るのが難しい時期が長く続きました。
キャリアの中断は、これで三度目です。

「もう、働くことはできないのかな」「社会から必要とされていないのかな」そんなふうに思う日も、正直、何度もありました。

働いていない負い目から、好きなものにお金を使うことさえ、気が引けるように感じたり。
「自分で稼いだお金で、好きなものやことに使いたい」そんな気持ちを抱えて過ごす日々でした。

とはいえ、目の前のわが子との愛おしい時間は、いましかありません。
「いまは働くことより、子どもの成長を見守って、小さな感動をもらうことを大事にしよう」この気持ちも、確かだったのです。

けれど、01からここまで読んでくださったあなたなら、もう気づいているかもしれません。

税理士法人での実務も、外資での経験も、郵送で完走したあの決算も、ひとり経理の日々も。
「キャリアが途絶えた」と感じていた時間の中でも、ちゃんと積み上がっていたのです。

次回は最終回。
学びなおしから、「おかえり」が言える働き方にたどり着くまでを書きました。

▶ 次回はこちら: 04 「おかえり」が言える働き方

▶ 第1回はこちら: 01 キャリアのはじまり 〜実務の道を選ぶまで〜

▶ 第2回はこちら: 02 結婚で変わった働き方

▶ 私のこれまでの道のりは プロフィール にまとめています。

▶ 連載のまとめ読みはこちら: 総集編 「おかえり」が言える働き方にたどり着くまで

🕯 いまトンネルの中にいるあなたへ

体調や家庭の事情で、働くことから離れている方へ。
休んでいる時間は、止まっている時間ではありません。
これまで積み上げてきたものは、あなたの中にちゃんと残っています。

今日も一日、おつかれさまでした。

この記事を書いた人
いちてぃ

いちてぃ

結婚、転勤、出産。立ち止まるたびに働き方を探しつづけて、いまは子どもに「おかえり」が言える在宅の経理の仕事をしています。

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